東谷心療内科　院長ご挨拶

私は若いころから寺の仕事をしながら総合病院に勤務しておりました。しかし二つの仕事をすることはとても負担が大きく、物理的にも体力的にも限界を感じて４７歳で一度退職を決意。その後自分のペースで仕事ができて、業務をある程度コントロールできる産業医の世界で仕事をしてきました。しかし病院時代から大きく仕事の量が減ってみると今度はどうしても自分のクリニックで外来診療がやりたくなり５７歳の時にクリニックを開業いたしました。
仕事は楽しくもあり苦しくもあり、ある哲学者は「働くことは『楽苦しい』ことである」と表現しました。まさに言えていると思います。仕事の量や質が本人に合っていると仕事に満足感が出てきます。業務負担が大きすぎたり物足りなかったり、また業務内容が自分に合っていないと体調を崩してしまいます。

こんな経験から、クリニック開業にあたって自分に合った業務量つまり診療時間を選択すること、さらに職場で働く人のメンタルヘルスに集中するという方向性を出すことで自分なりの折り合いをつけていこうと思い至りました。
現代は多様化の時代と言われるようになり、メンタルヘルスの世界も様々な年齢層の方、様々な診断名、様々な治療法が存在するようになりました。こんな中で当院の特徴をご紹介したいと思います。

１：職場で働く人のメンタルヘルスに力を入れています

職場で働いている方においては、上司と折り合いが悪い、仕事が多すぎる、業務内容が難しすぎる、同僚とうまくいっていないなど、要因が明らかな状況で体調を崩す方がとても多いです。診断としては適応障害であることが多く、休むと体調は改善していきますが、同じ環境に戻ると再び体調が悪化してしまうことも少なくありません。その際には、職場環境を調整することが必要になります。症状の改善とともに、職場の環境調整や本人の心構えなどについて、具体的なレベルでの対応に力を入れております。

２：投薬なしでの職場復帰を目指しています

職場で働く人の場合、職場環境がうまく整うとそのまま戻れる方が少なくありません。分かりやすいのは、交代勤務で体調を崩した社員の方が日勤のみで復職する。あるいは管理職になってから調子が出なくなった方を、リーダーを外して働いてもらうなどです。当院では休業の診断書を出してからは毎週1回の割合で通院していただき経過を見てまいります。職場を離れるだけで表情が和らぎ元気になる方が大変多いです。そのまま職場の調整ができると投薬なしで職場復帰ができます。復帰してからのことを考えると、できるだけ無投薬で復職することを優先しております。

しかし休業2か月を過ぎても体調が上がらない場合やそれ以前でも不眠や苦しさが強い場合にはもちろん投薬は行っております。そのほか精神科の薬には抵抗のある方も多いので、漢方薬の処方も行っております。支援としての薬剤はなるべく最低限にして、しかし必要な時にはしっかりと投薬を行う、というスタンスです。

人間は社会環境の中で生活をしています。誰とも交わらないで生活ができる環境はほとんどありません。その折り合いの悪さから体調を崩してしまうことが多いのです。それでもどうしても環境が変えられない、わかっていても苦手な上司や同僚と一緒に仕事をしなければならないことも多いです。そんな時にはどんな折り合い方があるのか、ご本人と一緒に考えていくのが私の仕事であると自覚しております。引き続きよろしくお願い申し上げます。

役　職

• 日本精神科産業医協会理事　日本産業精神保健学会代議員
• 山形県精神神経科診療所協会会長　山形いのちの電話理事

著　書

• 『ストレスと「うつ」がわかる本』2006年
• 『このたび「うつ」になりまして～誰でも分かる職場のうつ対策～』2010年