疲れの出る時期になりました

ちょっとご無沙汰しているうちに季節は6月下旬になってしまいました。コロナ騒動に心を奪われているうちに、心療内科が1年で一番忙しい時期になっております。

春は気温の変化などの影響で体調を崩しやすい時期であるのに加えて、さらに就職した、異動した、進学した、一人暮らしが始まった、などの生活の変化が起こる時期でもあります。その疲れは3日後、3週後、3か月後に出やすいのです。その中で一番大きな落ち込みは3か月目です。4月に変化があった方はこの6月が一番疲れが出やすいといえます。実際に外来では、就職・異動・昇進後の体調不良の患者さんが次々と受診されています。

訴えとしては不眠や食欲不振、気持ちの落ち込み、意欲低下などの症状のほかに、頭痛やめまい、動悸、息苦しさ、腹痛、倦怠感などの体の症状を強く訴える方が多いです。症状をネットで調べると「うつ病・うつ状態」とあり、心療内科の受診が必要と出ているので来られる方が多いです。ですので受診された方から「うつ病」ではないかといわれることもあります。それでも変化の後の3か月あたりでは確かに疲れてはいるものの、心のエネルギーはそれなりに保たれています。したがって、うまく仕事を減らしてもらえたり、職場の変更や業務の変更、あるいは一時的にリーダーや管理職を外していただくと回復することが期待できるのです。診断的には「適応障害」といわれる状態です。

「適応障害」という病態は、「原因となるストレスから解放されると体調が改善に向かうもの」ということです。悩む期間は短くても長くても、ストレスから離れるとすっと回復するというのがこの障害です。日常的には家に帰ると気持ちは軽くなり、金曜日の夜は元気になり、逆に日曜日の夕方になると次第に気持ちが暗くなる、というのは皆さん経験されていることと思われます。これは仕事に対する軽い適応障害といえます。健康な人にもその傾向はあるものなのです。職場に休まずに出勤できていれば問題はないのです。しかし出勤できなくなってしまったらそれは困ったことであり何らかの対応が必要になってきます。変化の後の3か月以内の体調不良は環境調整ですぐに回復できる可能性があるのです。

私からお願いしたいこととしては、受診の前に上司と相談をしてほしいということです。実際には会社の誰とも相談をせずに受診される方が増えています。とても勿体ないことなのです。「とても辛くて職場に来るのがつらいです」と訴えてよいのです。この仕事をしていてつくづく感じることの一つは、上司は部下が何を悩んでいるのか、何を負担に感じているのか意外と知らない、気が付いていないことが多いことです。分かっていないものなのです。ですから、改めて何々がつらい、何々が負担です、という話をすることで、「そうだったんだ」「知らなかった」と上司が気付いてくれて、職場の調整などがうまくが進むことが少なくありません。ぜひ周囲の人に相談してみてください。

疲れに対しての特効薬は「休息」と「クスリ」だと思って来られる方が多いのですが、適応障害の場合の対応は「職場環境の調整」と「休息」です。どうしてもつらくて出勤できない方には診断書でのお休みが必要になります。お休みは月単位で記入しています。それでも変化の後3か月以内の時期はまだまだ職場環境の調整などで回復が望めますので、早期に職場の方たちにご相談されることが一番の予防であることになります。また休息をして元気になっても、同じ環境に戻るとまた体調を崩してしまうことが多いのです。したがって、復職時に職場環境の調整をすることが必要になります。

 

東谷心療内科
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