折り合いをつけるということ

さて前回は適応障害というお話をしました。職場での適応障害は一言でいうと仕事との「折り合い」がポイントになります。こんな場合があります。

・仕事はやりがいがある、しかし量が多くなると苦痛になるし体調も悪くなる。辞めたいわけではないけれどもこのまま続けられるか心配である。

・あるいは、仕事が認められて昇進を果たしとても喜んでいるけれどもこのまま責任や業務負担が増えていって自分は期待に応えられるのかとても心配であり、事実体調も少し悪くなっている。

仕事が良いか悪いか、などという単純な問題ではなく、仕事と自分とがうまくバランスをとってかみ合っている状態ということを、外来ではよく「折り合い」「折り合いをつける」という表現をしています。適応障害とは折り合いがつかなくなって出現するものだということです。

折り合いについては体を例にするとわかりやすいかもしれません。食べると体重が増えやすい体質の方の血糖値が上昇気味である。そこで医師からダイエットを指示されたが、なかなか食事量を減らすことができない。そうしているうちに空腹時血糖やHbA1cの値が上昇してきて糖尿病の治療薬が開始された。薬を飲んで自分なりに食事に気を付けて何とか体重や検査値の値が維持できているという場合。薬剤を使用することで折り合いがついていると理解できます。

あるいは、血圧が高くなってきて、医師から塩分制限やダイエット、運動の必要があるといわれた。何とか味噌汁を1日1杯だけにしてそのほか塩辛いものを避けて毎日散歩をするように心がけているうちに、血圧も落ち着き食事の好みも味の薄いものに変化してきた。体調と食事や生活が折り合ってきたと言えます。

自分は腰痛が持病なので、ちょっと重いものを持つときには腰の角度に気を付けてなるべく背中が丸まらないようにして重いものを体に近づけて持つようにしている、などもあります。自分の弱点に配慮した対応をして折り合いをつけているのですね。

ではメンタルの場合の折り合い方はどんなものなのでしょうか。これが一言で言えないほどに奥が深いのです。まずはどんな変化が実際の適応障害を引き起こすことが多いでしょうか。これまで頑張って仕事をしてきて何とか体調を崩さずに勤務できていた社員が体調を崩すとき、その原因として多いのは①仕事量の急激な増加、②上司が変わって自分と折り合いの悪い人になった、③自分が昇進をして負荷のマネジメントなどの仕事や責任が増えた、などがあげられます。仕事量や責任の増加とうまく折り合えない、ということになります。

ではどう対応すると良いのでしょうか。次回書いてみます。

東谷心療内科
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