5の付く年齢は要注意

外来を長くやっているといろんなことに気づきがあります。一般に歳を取ると体力が低下して、若いころにできていたことができなくなったり、それに比して責任は大きくなってきて、バランスをとるのに苦労をすることになります。それが顕著に出るのが、35歳、45歳、55歳、というように5の付く年齢なのです。それについてお話をいたします。

まず35歳。外来ではよく野球のピッチャーの話をします。速球とフォークボールで三振を取って勝ち星を重ねてきた投手をイメージしてください。おそらく野球の世界では30歳くらいかと思いますが、スピードが落ちてきて打たれるようになりちょっとしたスランプに陥ります。その時期が人生では35歳に相当します。交代勤務が平気だったのにだんだんつらくなってきた。夜勤が体にこたえるようになってきたというように、体の衰えが出てきます。リーダーになったけれどもなんだかうまくできなというのも含まれます。そこで何らかの対応が必要になります。野球選手でしたらチェンジアップ、シンカー、ツーシーム・・などの変化球を習得してゴロを打たせてアウトを取るようなイメージでしょうか。変化していくことが求められます。体を鍛えて頑張ろうという人は多くの場合、実は長続きしません。倒れてしまいます。人生の時期において、うつ病・うつ状態が最も多いのがこの時期なのです。

45歳はさらに体力の低下が進みます。私が病院時代に夜間当番をした経験です。20歳代は夜勤の後に飲みに行けたのに、30歳代になると一晩ぐっすり寝ないと疲れが取れません。さらに45歳ころになると一晩の疲れは一晩では取れず、回復するのに3日くらいかかりました。病院の勤務医が45歳ころに開業する人が多いのはほかの要因もあると同時にこの夜勤のつらさも要因になるのです。現場で働く人をプレーヤーそれを管理する人をマネージャーと呼びます。それを一人の人間の中で考えていくと、年齢とともにどんどんプレーヤーの比率を下げてマネージャーの割合を増やす必要が出てきます。管理職になった時に、今までと違う能力が求められることになります。そこにうまく適応できるかどうかもポイントになります。

さらに55歳。お子さんも独立されて、仕事もどうやら先が見えてきた。そうなると自分は何のために働いてきたのか、何のためにいろんなことを我慢してきたのか、振り返るような時期が来るわけです。そして親御さんの介護の問題などが出てきます。自分だけではない問題を沢山背負う時期になります。自分の人生の意義というか、人生の味わいのようなものがテーマになってきます。そんな時期です。

実は65歳、75歳、85歳とさらに節目が続きます。これはまた別の機会にいたいたします。

東谷心療内科
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