不安の背中は意欲

しばらくブログをお休みしているうちに令和5年になってしまいました。時間がたつのは早いですね。今年もよろしくお願いいたします。

診療内科は冬の間、特に1月から3月初旬までは比較的落ち着いています。秋から初冬にかけては昼が短くなり夕方早く暗くなり、どうしても気持ちが沈みがちになります。それが雪が降って周囲が明るくなると寒くても比較的皆さんの気持ちが安定するように思われます。

それでもいろいろな不安を訴える患者さんがたくさん受診されます。その時によく口に出すフレーズがこれです。メモ用紙の左側に不安と書いて、中央に縦に線を引いて右側に意欲と書いて、不安と意欲の文字を線でつないでお見せすることが多いです。不安になったり心配になる方は、その背景ではとてもうまくやりたい、失敗せずにやりたいという気持ちが強いのです。意欲があるのです。ですから不安を軽くしてほしいということは意欲を抑えなさいということにつながってしまいます。うまくやりたい失敗せずにやりたいという気持ちはとても大事なやる気です。それが強いがゆえに不安も強くなって落ち着かなくなる、あるいは心配でじっとしていられなくなるということが起こります。という説明をすると安心する方が少なくありません。会社でちょっとした発表の担当になっており、考えるだけで不安になる、心配で夜も眠れないという場合などは、元気も意欲もありそのままで大丈夫であることが少なくありません。そうなのです、うまくやりたいから不安になるのです。

もちろん、家を出るときに電気、ガス、エアコン、戸締りなどを確認する気持ちが強すぎて苦しいという場合、あるいは車を運転していると息が苦しくなり動悸がしてトンネルに入れなくなるという場合などは、不安がとても強い状態です。もちろん治療が必要になることもあります。不安すべてを意欲の裏返しだけで片付けることはできないのも事実です。程度の問題とも言えます。

ある時に、選挙に出たいと思っているけれどもどうしても不安が強くて悩んでいる。このまま立候補してよいのかどうか迷っている、という相談を受けたことがあります。その時にこの話をしたところ、相談された方はみなさん立候補されて当選。そのまま長期間にわたって立派な仕事をされました。

何かやろうとすると不安になります。人に会うという単純なことでも、遅れたらどうしよう、でも早く着きすぎたらどうしよう、その間何をして過ごそう、でも遅れるとまずいし、などなど。人間は生きている限り不安がなくなることはありません。不安になって悩んで良いのです。

東谷心療内科
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