良好なワークライフバランス
以前過剰適応という話をいたしました。仕事を熱心にやり過ぎて疲れてしまう。仕事を断れない、断らないタイプの方ですね。他の人からどう思われているのかと気にし過ぎてしまっている可能性があります。この時にどんな対応があるのかという話です。
一つはやはり優先順位です。今やるべきことと明日や今後に伸ばせることの判断です。ある会社の部長さんは、本当によくできる方であると言われています。その方と直接お話をしたことがあります。ニコニコとお元気で気さくにお話をされました。とにかくやることがたくさんあるので、今すぐにやらなければならないことを優先してやる。そしてやれないことは先に延ばす。そして結局時間がなくなるので、やれないことが残る。今日も社長との会議で、ある事案に対してどうしてやらないのかと叱責を受けた。自分には能力も時間も足りないと訴えたら、その事案は他の方に回って行ったよと笑っておられました。体調を崩す方の中には、明日でも良いことを先にやってしまい、今日やらなければならないことを残してしまう。すると残業を延長して仕事をすることになり疲労してしまう、というパターンの方がおられます。優先順をつけること自体がなかなか難しい面もあるのですが、普段から意識しておくことが燃え尽き予防につながります。これは優先順位をつけることが大事だとわかっていても、どうしてもうまくマネジメントできないということが多いのかもしれません。
また仕事と仕事以外の生活のバランス、つまりワークライフバランスはとても大事です。仕事が終わってから何か予定がある、週末には楽しいことがある、という状況では結構忙しくても仕事がサクサクとこなせるような気がします。私の知り合いであったある商社マンの話を紹介します。その方は独身時代に英国で仕事をした時期があり、日本でいう下宿のようところに生活をしていたのだそうです。平日に疲れて週末(外国では日曜日はカレンダーの右側にあり、週末とは土曜日と日曜日を指します)にごろごろと寝ていたら、その下宿のおばさんにこういわれたそうです。「だから日本人はダメなんだ。週末にごろごろしているなんてとんでもない。さっさと出かけて女の子とデートしてきなさい。全くなんのために日本人は生活しているのか分からない」と。平日は週末を楽しむために収入を稼ぎ、週末を十分に楽しむ、それが人生だというのです。
そう言えば、フランにはバカンスの後のうつ病があると聞いたことがあります。1ヶ月くらい仕事をせずに夏に楽しい毎日を過ごした後、「あーこのあと1年間はバカンスがないのか。来年まで長い、寂しい」という感じでしょうか。それくらい、仕事以外のことに彼らは力を注いでいるわけです。もちろん楽しさばかりに限らず、この話は広がりがあります。お子さんがおられてその世話をしなければならないことは大変でもありますが、実は大きな支えなのです。会社の仕事と自分の家庭の用事、そのバランスをとることが良好なメンタルケアにつながります。
ある会社で残業が多い部門に優秀なリーダーが担当に回されました。その人は見事に時間外労働を減らして実績を出したのです。その後にわたしはリーダー面接をしたことがあり、とても印象的な会話をしました。リーダー曰く、「労務管理以前の問題です。早く帰ろうと伝えると、社員から『早く帰ってもすることがない、残業すると時間外手当が出るのでその方が良い』と言われるのです」というのです。その部門は社員みんなが独身男性でした。ワークライフバランスといった場合に、仕事であるワークと生活であるライフとのバランスになります。ところが日本人にはライフがない、という指摘があります。仕事に熱心に取り組みむことは素晴らしいことです。しかしそれは燃え尽きてしまう可能性を常に抱えています。時々は、ご自分なりのワークライフバランスについて考えてみませんか。