コロナと折り合う
職場のメンタルヘルスにおいては「折り合いをつける」ことが大事だと書いてきました。実はこのことは、毎日の日常生活においてもたくさんみられることなのです。コロナにおいても同じことで、特に飲食店は大変なストレスを抱えています。コロナ感染症拡大予防のためには店を閉めて人が密にならないほうが良いわけです。しかしそうなると収入がなくなってしまい生活ができなくなってしまいます。感染者数や病床の占有率に応じて、この地方ではこのくらいの時間は開店しても大丈夫だろう、お酒を出すと会話が弾んで感染リスクが高まるからお酒はやめにしよう。補助金や開店時間を調整して何とか折り合いをつけていこうというのが政策になります。文字通り押したり引いたりの駆け引きで折り合いをつけようとしているわけです。
ちょっと印象的ないくつかのお話を書いてみます。
1:感染が始まってから散歩やジョギングを始めた方はたくさんおられると思います。その中で、ある女性は一人で散歩してもなかなか続かない楽しくないことに気づき、お互いが信頼できるお二人で時間を決めて散歩することにしたのです。そうすると、今日は疲れたなと思っても相手のことを考えると出かけていき、実際に歩いて体が温まってくると気持ちも弾んできてマスク越しの会話も楽しくなるのですね。お二人は以前に増して関係が深まったようです。
2:昨年感染初期にマスクが不足して、しまっていたミシンを取り出してマスクづくりをした方もたくさんおられました。その中で自家製で作ったマスクをサークルのお友達にプレゼントして大変喜ばれたというお話を聞きました。マスクを作ることにとどまらず、それを利用して人間関係を深める方向にすすまれたところが素晴らしいところです。またその方は、コロナ下でも近所に出かけるときにおしゃれをしての気持ちを盛り上げているという元気な方で、趣味やサークルを通していろんな方との関係を大事にされています。
3:学校が閉鎖になったり、会社がリモート勤務になったりで、家にいる時間が長くなった、でも外出も抵抗がある。結果として、お父さんとお子さんがキャッチボールをしたり散歩、自転車乗り、などの時間を過ごし、また家族で家庭の庭でバーベキューをしているという方も見かけます。家族の仲が良くなったようだという奥様がおられました。
話しが飛びますが、ワクチン接種でも有名になったイスラエルという国は出生率が非常に高く現在人口が猛烈な勢いで増加しています。その基本は家族親族の結束の固さであり、子育てをするのに大家族で住んで両親以外に祖父母だけでなく、親戚の人も子育てに参加してくれるのだそうです。結果として子供の両親は安心してよい仕事に就くことができしっかりとした給料もいただけるとのこと。歴史的にユダヤ人に対する種々の虐待、偏見との闘いの結果として一番信頼できる家族・親戚の絆が強くなっていると聞きました。このコロナは一つの試練なのかもしれません。苦しい状況の中ではあるけれども家族のつながりが強化されるご縁なのではないかとも思っています。
どうしてもあれができないこれもできないとマイナスのことばかり考えがちですが、一方でこんなこともできるのではないかと考えて行動すると思いがけない展開があったりします。結局は、人と人とのつながりがないと元気が出ないように思われます。ネットであっても、今までよりも薄い関係でも、それなりにつながっているという感じが人を支えてくれます。上記のケースでも、結果的に人とのつながりが深くなっているのです。ひとりだけでは元気が出ません。いろんな方法で人とつながることが大事だと感じさせれれるこの頃です。