頑張りすぎる真面目な方に

外来ではいろんなタイプの患者さんが来られます。その中でとても多いのが、真面目で働き者、仕事はきちんとしておりどちらかというと完ぺき主義、うまくいかないと自分の頑張りが足りないと自分を責めてしまうような方です。外国では珍しいのだということも聞きますが日本ではとても多いタイプです。その方に、無理をせずにほどほどに働きましょういう話をしてもなかなかうまく届きません。そんな経験の中でこれまで一番患者さんの反応が大きかった話を書いてみます。それは山登りの話です。

登山の際に初心者の方は、山の登りに体力の半分を消費し、下山に半分使ってしまうそうです。ですから下山して家にたどり着いたときには、体力だけでなく水も食料も残っていない、というわけです。これに比べるとベテランの方たちは、上りに1/3、下りに1/3、帰宅した時には体力だけでなく水も食料も1/3が残っているのだそうです。ですから道に迷ったり突然の天候変化に対して、力も物資も余分にあるので対応ができるのだというお話です。

家に帰った時に疲れ果てて、男性であれば一杯飲んでバタンと倒れるように寝てしまうというのは働きすぎなのです。家に帰って今夜は何をしようかな、あの番組を見ようかな、どんな音楽を聴こうかなというような楽しみがあるくらいがちょうどよいということをお伝えしています。ところがなかなかうまく届きません。その理由がこんなところにあるようです。つまり真面目なとてもよく働く方たちは体力を残すような働き方をすると「怠けている」「手を抜いている感じがする」「とても落ち着かない」と感じられるようなのです。ですから、ちょっと残っている体力を「えいやっ」と使って疲労してしまいがちです。これは考えるだけでは不十分で、毎日の生活の中で体得していくものだろうと思っています。

ヨーロッパに滞在していたことのある友人は、外国人は定時まではよく働くと言っておりました。そして残業をすごく嫌がり、早く自宅に戻って自分の生活をしようとするそうです。これこそがワークライフバランスなのでしょう。しかし、私は外国でこうだからというお話には抵抗があります。自分たちにしっくりしたものでないと長く続きません。日本人が折り合いがつけられるようなライフスタイルというものを考えていきたいと思っています。

東谷心療内科
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