なにをするかの裏側は「なにをしないか」!

前回は過剰適応についてお話をしました。頼まれると断れない、仕事がたくさんあって終わらない、それでも手を抜かずに頑張って働いていたらメンタルダウンしてしまった、という流れになります。

ではダウンしないためどうするか、というヒントが今回の話題です。それは、何をするかを考えるときに同時に考えることであり、それは「何をしないか」なのです。目の前に2つの仕事があり、それをやっていると明日までに間に合わない。ではどちらか片方をやることになりますね。その際に、Aの仕事をやることはBを後回しにする、あるいは今日はBをやらない、という選択なのです。優先順位をつけるということにもなります。

私は会社の産業医を何社か務めているので、ダウンした社員さんの上司の方、ときには部長さんクラスの方にお会いすることがあります。その中に印象的な方がおられました。その部長さんが言うのです。「仕事は際限なくありますので、まずは今やらなきゃいけないことだけをしています」と。では終わらない仕事があるのではないですかと質問をすると「はい、終わりません。できるだけ重要度が高く、期日が迫っている仕事を優先してやっていると、残りはいつの間にかほかの人に回っていったり、何とかなるんですね」だそうです。もうひとりおられました。「私は頼りなくて何もわからないので、部下たちが一所懸命に働いて私を助けてれるのです」「本当に自分は何もしてないのですが皆さんから良いチームだと言われます。部下たちにありがとうありがとうと毎日言っているのです」。どちらの上司も、何をしないのかを実は大いに意識しているように私には感じられるのです。

それ以外にもたくさんの上司の皆さんにお会いしましたが、忙しい中なのにみなさん本当に気配りをされて余裕があります。何をしなければならないのかの優先順位をつけて、思い切り何をしないのか、という判断もされているように見えるのです。

外来でこの「何をしないのか」というお話をすると嫌な顔をされる方が多いのです。私は手を抜きたくない、怠けたくない、という気持ちなのだと思われます。しかし何をしないのかは、先ほどから述べている優先順位をつけることに限りなく近いです。

ちょっと話題を替えますが、仕事が終わったら趣味ができると考えている人は一生の間楽しむことができないかもしれません。だって仕事がずっと続くからです。楽しんでいる方は、時間がなくても趣味を楽しむのです。時間をつくるわけです。むしろ楽しいことをしながらでないと仕事はできない、くらいに思っているかもしれません。仕事は忙しい人に頼め、とか、忙中閑あり、という話も、どこか共通するポイントがあるように思われます。

皆さんのやるべきリストに仕事ばかり並んでいるようであれば危険信号。趣味や楽しみと仕事が並んでいることの方が健康的です。わかりにくい内容かもしれませんが、「なにをするか」と「なにをしないか」は隣り合わせであり密接な関係があるのです。

 

東谷心療内科
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